情報処理実習用手引き(システム解説編) 第5章 インターネットの利用 5.4 ネットワーク・ニュースの記事の書き方(mnews) 電子・情報工学系 新城 靖 <yas@is.tsukuba.ac.jp>
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5.2節では、mnewsを使ってネットワーク・ニュースの記事を読む方法について 説明した。5.3節では、mnewsを使って電子メールを読み書きする方法について 説明した。この節では、mnews を使ってネットワーク・ニュースの記事を投稿 する方法について説明する。さらに、記事のキャンセルの方法と保存の方法に ついても説明する。
mnews でネットワーク・ニュースに記事を投稿するには、次の2つの方法があ る。
mnews でネットワーク・ニュースに記事を投稿する方法は、電子メールを出す 方法とよくにている。違いは、次のような点である。
To:
)の代わりに、ニュース・グループ名
(Newsgroups:
)を打ち込む。
Distribution:
)を打ち込む。
ニュース・グループ ipe の中には、情報処理(実習)の講義に関連したニュー
ス・グループが開設されている。講義の中で練習をしたり、あるいは講義に関
する質問を行うためには、そのニュース・グループを使うとよい。(ニュース・
グループ名は、この原稿を書いている段階では決まっていない。そのことにつ
いては、授業時間内に担当教官から聞きなさい。この手引きの追加情報のペー
ジ http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~yshinjo/tebiki/
にも掲載
する予定である。)
mnews でまったく新しい記事を投稿するには、次の3段階の手順を踏む。
mnews でまったく新しい記事を投稿するには、a キーを使う。
a キーが使えるのは、ニュース記事選択モード
(1
行に1つの記事の題目が何ん出いる画面)、または、ニュース
カテゴリ/グループ選択モード
(ニュース・グループやその階層が表示され
ている画面)である。ここでは、まず前者の方法について説明する。
投稿したいニュース・グループを決めたら、まずそのニュース・グループを
ニュース記事選択モード
(1行に1つの記事の題目が並んでい
る画面)で表示する。そこで、a キーを打つと、mnews は次のよう
に問い合わせてくる。
これに対して y と答えると、mnews は、題名
(Subject:
)を聞いている。
これに対して、ローマ字か英語で題名を打ち込む。 漢字の題名を使いたい時には、ここでは適当な題名を入れ、後でエディタで修 正するとよい。最後にリターンを打つ。すると、mnews は、次のように 「配布範囲(distribution)」を尋ねてくる。
配布範囲とは、記事が配られる範囲を制限する機能である。普通は、この機能 を使うことはありない。ここでは、単にリターンを打つ。これで、これから投 稿する記事は、このニュース・グループを講読している全てのサーバに配布さ れる。
以後、エディタ (mule) が実行される。これ以後は、電子メールを出す方法と ほとんど同じである。すなわち、本文を書き、保存して(C-x C-s)、 エディタを終了させ(C-x C-c)、mnews に戻って内容を 確認(confirm)してから、投稿する。
投稿した記事は、すぐには記事のリストには現われない。これは、効率のため、 ある程度ため込んでまとめて処理されるからである。うまく投稿されたかどう かを確認するには、10分〜15分ほど待つ必要がある。そして、1度 mnews を終了して、再び mnewsを実行する。
なお、ネットワーク・ニュースというものは、万全なシステムではない。あな たが投稿した記事が、広いインターネットを転送されている間に、紛失してし まって、ある組織には届かないこともある。また、転送には、電子メールより もずっと時間がかかる。
「ニュース記事選択モード
」だけでなく、「ニュー
スカテゴリ/グループ選択モード
」からも記事を投稿することができる。そ
れには、まず、投稿したいニュース・グループにカーソルを合わせる。次に、
a キーを押す。すると、次のようにニュース・グループ名を聞いて
くる。
図5.4.4 ニュースカテゴリ/グループ選択モードで「a」と打った所
これでよければ、リターンを打つ。ここで修正してもよい。
ニュース・グループを決定した後は、「ニュース記事選択モー
ド
」からの投稿とまったく同じである。
ネットワーク・ニュースの記事の場合でも、ある記事に続けて返事をするよう に記事を出すこと多い。これを、フォローアップするという。ただし、形式上 は返事を書くようにして記事を書くが、元の記事を書いた人だけではなく他に も大勢の人が読んでいることを忘れてはならない。mnewsでも、他のネットワー ク・ニュースを読み書きするプログラムと同じように、フォローアップするこ とが簡単にできるようになっている。ネットワーク・ニュースの記事の大半が、 フォローアップによるものである。
mnews でフォローアップする方法は、電子メールで返事を出す方法 (r,R)と非常によく似ている。mnews のフォローアップ機 能には、次の2種類がある。
ここで y を押すと、エディタmuleが実行される。大文字の F の場合は、電子 メールの返事を出す R と同じように、元の記事の内容が引用される。小文字 の f の場合、元の記事は引用されない。ネットワーク・ニュースの場合には、 F を使うことが多いであろう。
F を使ってフォローアップする時には、元の記事の引用は必要最低限に留める。 そして、自分の意見を必ず書き加える。1つの目安として、自分が書いた行の 方が多くなるようにするというものがある。
ネットワーク・ニュースの記事の内容と形式は、電子メールとの共通点が大き い。ネットワーク・ニュースでも、1行を漢字で30文字から35文字(英数 字の場合は、60文字〜70文字)で折り返す習慣がある。本文の末尾には、署名 を付ける習慣がある。使える文字の種類も、電子メールと共通である。
その他にネットワーク・ニュースに記事を投稿する場合、次のようなことにつ いて気をつける。
インターネット、特にネットワーク・ニュースという仕掛けは、基本的に非常 に高性能のコピー・マシンであると考えると分かりやすい。あなたがネットワー ク・ニュースに投稿した記事は、多くの組織にコピーされる。また、雑誌の付 録として、CD−ROMにコピーされることもある。よって、他の人の著作物 を自分のネットワーク・ニュースの記事に取り込んで投稿する時には、細心の 注意が必要になる。
著作権法では、「引用」という言葉を定義している。著作権法に よると、次のように著作物を「引用」することができると定めている。
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
第二章 著作者の権利
第三節 権利の内容
第五款 著作権の制限 (引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合 において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、 研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国又は地方公共団体の機関が一般に周知させることを目的として作成し、 その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これら に類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載する ことができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでな い。
「正当な範囲内」ならば、「公表された著作物」を安心して「引用」すること ができる。ただし、「正当な範囲内」がどこまでかは、非常に難しい。著作物 の中で特に厳しい扱いを受けているのは、文学作品や歌詞である。これらは、 表現そのものに価値があるものだからである。他人の著作物である歌詞を、自 分の記事に取り入れて投稿した場合、歌詞を作った人から著作権侵害で訴えら れる可能性もある。他人の著作物を自分の記事に取り込む場合は、常に「正当 な範囲内の引用に当たるか」、「公正な慣行に合致するもの」かを注意する。
引用する時には、必ず元の著作物が何であるかを必ず明示する。本ならば、著 者、出版社、発行年、ISBN などを書くとよい。
著作権法は、インターネットが発達する以前の法律である。インターネットの 時代では、合わない部分がたくさんある。基本的に著作権法は、放送局や出版 社、それに、レンタル・レコード店といった業者を想定して作られている。著 作権法が制定された時には、個人の力が弱く、個人が著作権を侵害して被害を 与えるとは考えられていなかった。インターネットは、個人の力を大きく拡大 する。著作権法もインターネットの出現に合わせて大きく修正されることにな るであろう。
ニュース・グループfj
における著作権に関する議論が、
fj.soc.copyright
, fj.news.policy
というニュー
ス・グループでしばしば行われる。これらのニュース・グループは、国会では
ないので、ここでの議論の結果がそのまま法律になるというわけではない。し
かし、ここでの議論が慣習となって定着することになるであろう。そして法律
は、そのような慣習を認めるような形で作られることになるであろう。
ネットワーク・ニュースでは、自分で書いた記事を取り消す(キャンセルする) ことができる。ただし、無闇にキャンセル機能を使ってはならない。誰かがす でにあなたの記事にフォローアップの記事を書いている可能性もある。もしフォ ローアップ記事が出てしまった後で元の記事がキャンセルされたとすると、他 の人は、フォローアップ記事しか見ないことになり、わけがわからなくなる。 また、キャンセルという機能は、万全ではなく、所によってはキャンセルされ ずに残されることもある。
mnews で、投稿した記事をキャンセルするには、「ニュース記
事選択モード
」でキャンセルしたい記事にカーソルを合わせて、大文字で
Cと打つ。すると、確認を求めてくるので、キャンセルしたい場合は、
yと打つ。記事のキャンセルも、記事の投稿と同じく、有効になるま
で少し時間がかかる。
なお、記事のキャンセルは、一般には投稿した本人だけができるものである。
ネットワーク・ニュースでは、ある記事にたいして、フォローアップ記事の形 で返事を書くことが普通である。それ以外に、差出人に電子メールで返事を出 すこともある。このことを、リプライ(reply)するともいう。
フォローアップ記事を投稿するか、電子メールでリプライするかは、内容によ る。普通は、フォローアップ記事を投稿することが好まれる。あなたの返事や、 その返事に対する相手からの返事が、あなた以外にも役に立つことであれば、 電子メールでリプライするのではなく、フォローアップ記事にすべきである。 ネットワーク・ニュースは、大勢の人が読んでいるので、多数の電子メールに よる返事が差出人の所に来る可能性がある。そうなると差出人は、同じ内容の 返事を何通も書かないといけなくなるかもしれない。また、元記事の差出人よ りも他の人の方がもっとよい答えを持っていることも多い。
あるネットワーク・ニュースの記事に電子メールで返事を出す方法は、5.3節 で説明した電子メールに対して電子メールで返事を出す方法 (r,R)とほとんど同じである。また、この節で説明した フォローアップ記事を投稿することとも非常によく似ている。mnews を使って いると、よくフォローアップ記事を投稿するつもりでリプライの電子メールを 書いてしまうことがある。
ネットワーク・ニュースでは、毎日膨大な量の記事が投稿されている。それを
保存するためのディスク容量には、限りがある。よって、ネットワーク・ニュー
スの記事は、ある保存期間が過ぎると自動的に消される
(expire
)。保存期間は、世界中で同じというわけではなく、場
所(ネットワーク・ニュースのサーバ、記事をため込んでいるコンピュータ)
により異なる。
記事はいつか消されるので、ネットワーク・ニュースの記事で、有益なものを 見つけた時には、ファイルに保存する。
mnews で、記事選択の画面で「CANCEL/LOST
」と表示されること
がある。これは、記事が投稿者によりキャンセルされたか、あるには、期限切
れで消去されたのか、どちらかという意味である。
mnews は、標準で各自の次のディレクトリに記事を保存する。
~/News
最初は、このディレクトリは存在しない。ネットワーク・ニュースの記事を保 存するためには、あらかじめこのディレクトリを作成して置く必要がある。そ れには、一度だけ mnews を実行する前に次のように打つ。
% mkdir ~/News
この作業は、1度だけ行えばよい。mnews 実行する度に、この作業を行う必要 はない。この作業の効果は、以後このディレクトリを消去するまで有効である。
記事を保存するには、まず「ニュース記事選択モード
」にする。つまり、1つ
1つの記事の 題名(Subject:
)が並んでいる状態にする。ここで、保存したい
記事を選んで、s キーを押す。あるいは、「ページャ・モード
」で記事を読ん
でいる時に、s キーを押してもよい。
s キーを押すと、図5.4.6のように、mnews 、保存するファイル名を
問い合わせてくる。この時、最初に「 ~/News/ニュー
ス・グループ名
」という名前が入っている。これでよければ、リターンを
押す。他の名前にしたい時には、それを消して打ち直して、最後にリターンを
打つ。
記事を保存する時には、次の2種類がある。
記事をファイルに保存する時、mnews は、保存するファイルが存在しない時に は、自動的にそのファイルを作成して保存する(追加でも上書きでも結果が同 じ)。ファイルが既に存在する場合、mnews は、次のように聞いてくる。
普通は、1つのファイルに複数の記事を保存するので、追加(アペンド)する の意味で y を押す。上書きの意味の o では、古い内容が消されてしまう。別 のファイルに保存したい時には、n を押し、もう一度 s からやり直す。
記事保存用のディレクトリを作成しなさい。 記事を保存してみなさい。追加 (アペンド)と上書きの違いを確かめなさい。 保存した記事を、ls, less で 確認しなさい。
この手引きに関して追加情報が、次のWWWページにある。
http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~yshinjo/tebiki/